一般消費者との接点が多い小売業界では、VR/ARの活用事例は多岐にわたります。本記事では小売の店頭やeコマースでのVR/AR活用事例、ユースケースのレポート等を紹介します。ウォルマート:全米100万人以上の従業員にVRトレーニング小売大手のウォルマートは、従業員の教育にVRを導入しています。米国全土の4,700店舗に一体型VRヘッドセットOculus Go17,000台を配備。100万人以上の従業員に対して、効率的に、市場の変化に対応しうるトレーニングを施すのが狙いです。具体的には、大規模なセールを行うBlack Fridayといった非日常イベントの体験、顧客視点に立ったトレーニング等を提供しています。2019年には、「銃撃事件に対処するためのVRトレーニング」が現実の銃乱射事件に有用だったとのCEOコメントもありました。Walgreens:HoloLens 2で店舗改装に向けたスタッフ研修同じく米国の薬局チェーンWalgreens(Walgreen Company)は、同社と提携するKroger Expressストアのスタッフ研修に、マイクロソフトのMRデバイス「HoloLens 2」を活用しています。背景として、新規にオープンするKroger Expressnoの店舗では、従来Walgreensが取り扱っていた化粧品や薬と一緒に食料品も買えるよう、Walgreensの店舗を改装することがあります。HoloLens 2を使った研修プログラムは、店舗の改装が完了する前にスタッフが新しいレイアウトに慣れ、仕事の準備ができるようにするのが目的です。この従業員トレーニングでは、3Dで作られた仮想の店舗モデルを使用。商品の補充や傷みやすい商品の品質チェック方法、カスタマー対応などを学習します。Amazon:家具・インテリアで広がる”AR試し置き”家具やインテリアの販売で進むのが、ARを使った試し置きです。例えばAmazonでは、家具・インテリア製品を部屋に試し置きできる「ARビュー」機能が、日本でもリリースされています。これにより、商品のサイズの確認やイメージの食い違いなどを防げます。表示された商品の3Dモデルを前や横など様々な角度から確認することや、移動させたり向きを変更させたりといったことが可能です。同様の「ARで試し置き」できるアプリは、家具・インテリア通販のLOWYAや、イケアなどにもあります。購入の前に商品を部屋に試し置きすることで、返品率低下や顧客満足度の向上につながると期待されています。Champs Sports:スナップチャットアプリで靴のAR試着店頭での試着が当たり前だったアパレル業界にも変化の兆しがあります。米国のスポーツ小売店Champs Sports(チャンプス・スポーツ)は、写真共有アプリ「Snapchat(スナップチャット)を用いたAR試着をスタートしました。ユーザーはスナップチャットのアプリを起動、自身の足にスマートフォンのカメラをかざすと、ARでスニーカーを履いたときの様子を確認できます。商品が気に入れば、”Shop Now”のボタンをタップして購入できます。対象となる商品数は少ないながらも、ユーザーによる多数のシェアや、高いエンゲージメントといった効果が見られています。Ulta:コロナ禍にも強いバーチャル・トライオンARを活用した「バーチャル・トライオン」の強みは、新型コロナウィルスの流行下でも発揮されると見られています。米国の化粧品販売会社Ultaは、実店舗の体験をオンラインでも可能にしており、外出せずとも自分の顔で化粧品を試すことができます。これは感染防止のために必要な「Social Distancing(他人との距離を保ち、接触を避けること)」の維持に繋がるものです。資生堂:ARメイク×オンラインカウンセリング日本国内の取組事例としては、株式会社資生堂の「バーチャルオンラインカウンセリング」があります。これはARを活用し、自身の顔に合わせリップや、チーク、ファンデーション、アイシャドー等のメイクアップ商品の色味をリアルタイムにオンライン上で確認可能というもの。実施期間は2020年10月7日から12月6日までの2ヶ月間です。本取組にはパーフェクト株式会社のARメイク技術と、AIおよび対面型ビデオ通話を組み合わせています。資生堂のグローバルラグジュアリーブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」の伊勢丹新宿店にてビデオ電話をかけ、気になるメイクアップ製品のバーチャルシミュレーションを試すことができます。デロイト:小売業界のAR活用についてレポート会計事務所のデロイト・トウシュ・トーマツ(デロイト)は、こうした小売業界におけるAR活用についてレポートを発行しました。商品ごとに異なるベストなARユースケースを、製品マトリクスや導入事例をもとに分析します。例えば、主な商品を「標準化の程度(Y軸)」「カスタマイズの余地(X軸)」で分類。標準的な商品を揃え、かつカスタマイズの余地が大きい商品にこそARが活用できるとしています。該当するプロダクトとしては自動車が挙げられています。一方AR導入の課題については、フォトリアルな3Dモデル作成に要するコスト(1点につき100ドル~800ドルと試算)を挙げています。ただし在庫保有や紙製のカタログ廃止に伴い、コスト削減効果も生まれるため、“この費用対効果も鑑み、導入のロードマップを策定することが必要である”としています。VRソリューション導入・開発・コンサルはMoguraにご相談をVRを活用した業務改革は、今後さらに増えていく見込みです。しかし、VR/ARのソリューションは「既製品をそのまま導入すればよい」というものではなく、実際の現場に合ったものにするための新規開発や追加実装が必要な場合があります。株式会社Moguraが運営する開発・コンサルティングサービス「MoguraNEXT」では、VR/ARソリューションの開発・導入のご相談も可能です。今回、紹介したようなVR/AR活用事例は、現在社会問題となっている新型コロナウイルス感染症の対策としても有効で、対面接触を伴わないVRワークスタイルの提案・開発なども可能です。「MoguraNEXT」の実績・資料はこちらからダウンロード頂けます。VR開発・コンサルティングのご相談は、こちらまでお願いいたします。