VR/ARは企業での導入が進められており、研修や訓練の効率化・定着率アップ、建築や製造分野における事前のモデル確認など、様々な活用が行われています。本記事では大手企業を中心に、国内外でのVR/ARビジネス活用事例を紹介します。松屋フーズ:全国1,000店舗以上でVR接客トレーニング導入株式会社松屋フーズは、新人アルバイト向けにVR接客トレーニングを導入しています。このVRトレーニングは、株式会社デジタル・ナレッジと株式会社積木製作による共同制作。トレーニングには「判定機能」が搭載されており、「お冷を入れる、トレーを運ぶ」といった動作、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」などの声かけの大きさや速度、目線の高さなどに対し、定められた基準に達しているかを自動で判定します。言語は日本語のほか、ベトナム語、中国語にも対応しているため、昨今増加している外国人スタッフへのトレーニングでも効果が期待されています。さらに、これまで各店舗のトレーナーが経験に基づいて判断していた部分を標準化することで、実店舗の状況や人に左右されない「OJTの質の均一化」を狙います。同社は全国1170店舗にて、本VRトレーニングの導入を進める方針です。ボーイング:宇宙飛行士のVR訓練に超高解像度デバイス利用米航空機メーカーのボーイング社は、宇宙飛行士のトレーニングにVRを採用します。鍵となるのは、フィンランドのVarjo(ヴァルヨ)が開発する超高解像度の業務向けVRヘッドセットです。宇宙飛行士向けのVRトレーニング導入は、1980年代からNASAが、ボーイング自身も2017年から検討を進めていました。しかしVRヘッドセットの解像度の限界から、ISSとのドッキングといったトレーニングは困難でした。これを解決するのが、Varjoのデバイス。”人の眼レベル”という高い解像度により、宇宙飛行士がVR内で文書やディスプレイ、ボタンといったものを自然な視点から読み取れます。こうして、コックピット内でのトレーニングが実践的なものになりました。対象のクルーは、このVRトレーニングプログラムで打ち上げやドッキング、着陸といった訓練を行い、2021年の任務に備えます。FedEx:VR研修で学習定着率に顕著な改善世界最大の総合航空貨物輸送会社フェデックス(FedEx)のグループ子会社FedEx Groundでは、VRによる業務研修導入が進んでいます。VR研修により、学習効率の改善・安全性の向上・研修コストの削減などが期待されます。従来の業務研修は現場で行っていましたが、新人がひと通りの作業をできるようになるまで時間がかかること、作業内容のハードさから離職率が高いことが課題でした。この解決のため、FedEx Groundのトラック配達部門ではVRを活用し、作業員が効率よくかつ安全に研修することを重視。VR研修の導入により、作業員は現場に立つ前に研修を行えるようになりました。VR研修プログラムの作成には、ウォルマート等とも取引実績のある、VRトレーニングシステムのStrivr社と提携しています。FedEx Groundによれば、VR研修による学習定着率は、従来の研修方法と比べて顕著な改善が見られたとのことです。日建設計:建設設計の検討に一体型ヘッドセット導入株式会社日建設計は、建設設計検討のプロセスにVRを採用。建築・建設分野では、シミュレーション用途でのVR活用が進められています。VR内でBIMデータ(※BIMソフトウェアで作成したデータ。VRでは3Dデータに変換されたものとなります)を閲覧することで、寸法やサイズ感の確認、実際のイメージとのズレの修正などが容易になります。一体型ヘッドセットを使うため、PC等のセットアップもなく手軽にVRでBIMデータが確認でき、効率的な設計業務を実現しています。なお、この取組には株式会社Moguraも協力しており、2018年からBIMデータを使って建築設計検討向けの建築VR基本仕様書策定などのプロジェクトを実施。2019年度には、日建設計の本社ビルのBIMデータを元に、一体型VRヘッドセットOculus Questで建築設計検討を行うためのアプリケーションを開発しました。https://mogura.co/ja/blog/new/vr-app-development/KDDI:社員研修で遠隔地の施設をVR見学KDDI株式会社は、株式会社Synamonの開発・提供するVRコラボレーションサービス「NEUTRANS BIZ」を活用した社員研修を実施しています。移動を伴わず、遠隔地の様子を学べることがポイントです。実施会場より約800km離れた山口県の衛星通信施設を見学するために、KDDIでは、参加者複数人が同じ360度映像を見ながらコミュニケーションを取る形式の社員研修を実施。参加者はVR空間内でコンテンツを視聴し、現地に直接移動せず施設について学びます。「NEUTRANS BIZ」を提供するSynamonは、「今回の研修を始めとした人事分野の先進的な取り組みにおいて、今後も更なるサポートを拡充する」とコメントしています。パナソニック:VRで自動車のUI/UX検証効率化パナソニックグループのオートモーティブ社は、自動車用コクピットのヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)検証用VRシミュレーターを開発しました。VRシミュレーターを活用し、表示策定や意匠決定の効率化を図ります。シミュレーターはUIとUXを検証する2種類。UIシミュレーションは、VRヘッドセットを用いてHMIを検証するためのもので、実際の操作とそれによる表示変化をインタラクティブに検証可能です。一方、UXシミュレーションはVRヘッドセットを使わずに、壁と床スクリーンに映像を投影し、乗り込みから降車までの一連の乗車シーンを被験者が動きながら検証できます。同社はこれら2種類のVRシミュレーターを活用し、自動車用コックピットの搭載機器を開発。カーメーカーへ提案していきます。フォルクスワーゲン:ARデバイスで車両修理効率を93%改善自動車メーカーのフォルクスワーゲン(Volkswagen)は、英国におけるディーラーでの車体修理にARヘッドセットを導入します。トライアルでは、修理効率が90%以上も改善しました。ヘッドセットを通じて、技術者は本社の専門家とコミュニケーションが可能。複雑な問題に直面したとき、アドバイスを得られます。AR導入の一番の狙いは、修理工程を速め、顧客が車両を使えない期間を短縮することです。トライアルの結果では、修理の効率は93%改善。車両を使用できないダウンタイムは1年分削減、金額にして25万ポンド(約3,400万円)に上ると言います。トライアルの成功を受けて、フォルクスワーゲンは英国内の67箇所のバンセンター、及び30の公認修理工場でAR導入を計画しています。ロレアル:ARトライオンでヘアカラーを販促化粧品のロレアル(L’Oreal)は、ヘアカラーの販売でARを活用しています。ウォルマート店頭でグーグルレンズを用いると、ガルニエ(Garnier)ブランドのヘアカラーのARトライができるというものです。消費者はGoogle Lensのアプリを起動し、該当商品をスキャン。するとガルニエの製品ウェブサイトに移動し、ヘアカラーのARトライオンを体験できます。自分の髪の色を変えて確認できるほか、気に入った商品はサイト内で購入できます。VRで摂食障害治療ニューヨーク州のHoward Gurr医師は、VRを使って拒食症や過食症の患者の不安、自身の体に対するイメージの問題に取り組んでいます。VRは他の治療方法よりも効果的であり、9割以上で摂食障害の克服に貢献したということです。治療方法は、認知行動療法とVRを組み合わせたものです。VRを用い、まずビーチなどの落ち着いた環境を体験することで患者をリラックスさせます。その後、同様にVRの中で飲食店、試着室といった、患者の不安の種になるような場所へ連れて行きます。そして「PsiousToolsuite」と呼ばれるプログラムを使い、患者自身の体に対するイメージの問題や、摂食障害の克服をサポートしていきます。「PsiousToolsuite」は様々なVR環境を揃えており、医師らは患者のストレスレベルをチェックしながら場面をコントロールできます。また「Psious」のプログラムでは、治療向けにVR療法を定額利用するプランを用意。オンライントレーニングなども合わせて提供しています。XRHealth:全米各地にバーチャルクリニックを開業マサチューセッツ州が拠点のXRHealth(※旧VRHealth)社は、米国各地にバーチャルクリニックを開業します。VRを活用し、神経疾患や脳卒中等のリハビリテーションを遠隔で実現していきます。XRHealthは、自宅で治療を受けられる、VRを使ったリハビリテーションを提供しています。VR技術と組み合わせる治療ソフトウェアは、脳卒中リハビリテーション、記憶障害、神経疾患といった病状に対応しています。遠隔医療施設(テレヘルスクリニック)は、まずマサチューセッツ、カリフォルニア、ニューヨーク等で開業。さらに展開する都市を増やす計画です。VRソリューション導入・開発・コンサルはMoguraにご相談をVRを活用した業務改革は、今後さらに増えていく見込みです。とはいえ、VR/ARのソリューションは、既製品をそのまま導入すれば良いというものではなく、実際の現場に合ったものにするための新規開発が必要な場合があります。株式会社Moguraが運営する開発・コンサルティングサービス「MoguraNEXT」では、VR/ARソリューションの開発・導入のご相談も可能です。今回、紹介したようなVR/AR活用事例は、現在社会問題となっている新型コロナウイルス感染症の対策としても有効で、対面接触を伴わないVRワークスタイルの提案・開発なども可能です。「MoguraNEXT」の実績・資料はこちらからダウンロード頂けます。VR開発・コンサルティングのご相談は、こちらまでお願いいたします。